「メディアとアーカイブ」(松本恭幸【編】、大月書店)を読んで/メディアの主戦場「アーカイブ」

「メディアとアーカイブ」という本書のタイトルに強く惹かれた。というのも、いかなる種類のメディアであっても、日々の活動の蓄積として「アーカイブ」の問題を避けては通れないからだ。

必要なのは「行けばそこにあるはず」という意味での新聞社の古い資料倉庫的なアーカイブ観ではない。今やメディアにとって、アーカイブの生きた利・活用のフィールドを目指すことなしに、一切のビジョンを構築できない。

本書は「地域の情報環境整備」「地域からの情報発信と交流の場づくり」「地域の記録と記憶の継承」の3部構成。 地域からの情報発信の事例に詳しい 11人が執筆している。編集と執筆にあたっている松本恭幸さんは武蔵大学社会学部メディア社会学科教授。

新聞社や放送局が「いい紙面」「質の高い番組」づくりを目指すための環境づくりの点では、技術もソフトも、一定の水準をキャッチできる環境にある。読者や視聴者から見て、紙面や番組の出来に明らかな差が生まれるのは、もっぱらデジタル社会におけるメディアビジョンに関して、当事者たちの意欲と問題意識に差があるからだ。

インターネット草創期、経験値に乏しいための泣き言がメディアの現場から聞こえてきたものだ。今やそんなことは通用しないことぐらい、当事者なら分かっているはずだが、本書が、第2部で提示している「地域からの情報発信と交流の場づくり」の意味についてはまだまだ理解されていないかもしれない。「交流の場づくり」をメディアの在り方論と絡めて考えるには実に多くの論点をこなすことが必要だが、さまざまなメディアの運営者、取材者や編集者、営業職などとしてかかわる人々へのインタビューから始めてみてほしい。「なぜあなたはこのメディアにかかわるのか?」

本書で紹介されているすべての事例に参加・関与している人たちの肉声をすべて集め、分析できたら、「市民メディア」「地域メディア」にとどまらず、デジタル化の前に低迷逡巡している多くの既存メディアにとっての意味ある知見が得られるだろう。将来的なメディアビジョンを模索するための戦略的資源も得られるはずだ。

それぞれのメディアにかかわるすべての人々の参加理由を丹念に集約し、それぞれのメディアビジョンをリデザインを試みてはどうか。参加の機会、参加の場としてのメディアについて、薄ぼんやりながら浮かんできたのは、仙台・東北発の地域メディア「TOHOKU360」にかかわることを認めてもらったことがきっかけだ。

個人的な経歴で言えば、40年という長きにわたり、従来型メディアの典型である地方新聞社で多くの同僚らと仕事をしてきた。7年前に新聞社を完全に卒業してからは見よう真似の起業体験を経て、いまだに続いているのがフリーの取材者・編集者としてのふるまいだ。フリーになってなおダイアリーが真白になることもなく、取材者としての動きを続けていられるのは「TOHOKU360」に、かなり自由な雰囲気のもとで参加出来ているおかげなのだ。

詳細は関連するネットコンテンツを参照してほしいが「TOHOKU360」には「市民メディア」「地域メディア」としてのいくつかのポイントがある。そこを押さえつつ、若い編集者、取材者のみなさんと交流し、取材者としての関心を持続できている。既存メディアに身を置いているころは想像もできなかった、取材者としての幾つかの「メディア実験」も含めて、ジジイの暮らしとしてはかなり贅沢なように思える。

間もなく発刊です/「令和のローカルメディア」

「令和のローカルメディア 防災・関係人口拡大に向けた課題」が2021年7月末、あけび書房から発売になります。東日本大震災後のローカルメディアの現場を追い続けている松本松本恭幸さん(武蔵大学教授)からの誘いで、ビデオ作家で、NPO法人市民がつくるTVF副代表の佐藤博昭さんとフリーライター佐藤和文が参加しています。佐藤和文は「第1章 立ちすくむ地方紙―未来を引き寄せるために」と「第5章 新たなウェブメディアの潮流-地域のウェブメディアはこれからどう発展していくのか」を担当しています。アマゾンで予約受付中!

「ローカルメディア」とひと口に言っても、現場の実態や意味合いは複雑で多様です。既存の新聞やテレビ・ラジオまで含めた「ローカルメディア」の可能性についてトータルに表現した例も、それほど多くないように思われます。

ローカルメディアの世界は、時には微弱電流のように細々としていますが、人のかかわりがさまざまに存在する、不思議で、多様な世界です。「令和のローカルメディア 防災・関係人口拡大に向けた課題」では、このメディア世界をなるべく丹念に見渡しながら、近未来につながる議論の材料を提供しようとしています。結論を導き出すのは第三者的な専門家や観測者ではありません。複雑な現場をよく知る「中の人」自身が立ち上がる以外に道は開けません。

以下、参考までに目次を掲げます。

 

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まえがき―3.11からコロナ危機までの期間、ローカルメディアはどう変わったのか

第1章 立ちすくむ地方紙―未来を引き寄せるために

はじめに

① ローカルメディアはネット社会とともに

ネット草創期を振り返る

縮む新聞―地方紙の苦境

「新聞」から解決策は生まれない

② 地方新聞社の新展開

メディアプラットホームのすすめ

古くて新しい問題「ハイパーローカル」

参加型メディアであること

「上から目線」は最悪の禁じ手

③ 静岡新聞社の挑戦

画期的な「イノベーションリポート」

シリコンバレーが改革の機運つくる

大石前社長へのインタビュー

④ ローカルメディアの手掛かりはどこに?

イメージは「メディア・ビオトープ」

地方新聞社ならではの資源

古民家再生とローカルメディア

第2章 CATVはどこへ向かうのか 

―業界再編が進む中で地域密着志向の独立系CATV局の目指すもの

はじめに

① CATV局による自主放送

地域の情報を伝えるコミュニティチャンネル

コミュニティチャンネルの運営委託

② 大都市圏の独立系CATV局の現状

KCNグループの各局

地域に密着した番組制作を目指して

KCNグループの今後の課題

③ 開局から半世紀を迎えた老舗CATV局の現状

世帯加入率9割以上のLCV

コミュニティチャンネルの重視

LCVの今後の課題

④ 他局とのつながりを通した事業展開の可能性

地上波民放2局の宮崎で誕生したBTV

海外の放送局との交流を通して

⑤ インフラビジネスからコンテンツビジネスへの回帰

ニュース報道に取り組む中海テレビ放送

米子をハブにした情報配信

中海テレビ放送の新たな挑戦

第3章 コミュニティFMの変遷①  ―災害時の役割をめぐって

はじめに

① 阪神・淡路大震災をきっかけに誕生した「FMわぃわぃ」

② 中越地震、中越沖地震の災害放送

臨災局をきっかけに全国初のコミュニティFM局の開局

コミュニティFM局から臨災局へ

③ 3.11で数多く誕生した臨災局

コミュニティFM局による災害放送

臨災局の開局支援

④ 熊本地震の災害放送

災害時に市民に聴かれるための平時の放送

総合通信局による臨災局支援と残された課題

第4章 コミュニティFMの変遷② ―地域づくりの役割をめぐって

はじめに

① 21世紀の沖縄における開局ラッシュ

県庁所在地に誕生した2局目のコミュニティFM局

人の繋がりを通した新たな開局

② おらが街のコミュニティFM局

聴取率83.7%のコミュニティFM局

地域に密着した様々な取り組み

③ 観光協会が運営するコミュニティFM局

オフトーク通信に代わる町民参加型メディアとして

第三セクターに代わる公設民営局

④ 離島でのコミュニティFM局開局

苦戦するNPOによる開局

CATV局による開局

⑤ 近年開局したコミュニティFM局の運営方式

「きらら方式」による開局

「京都三条ラジオカフェ」をモデルに開局

コミュニティFM局にとってベストの運営方式とは

第5章 新たなウェブメディアの潮流 

―地域のウェブメディアはこれからどう発展していくのか

はじめに

① 自由なメディア論が地域を耕す

既存メディアにとってのヒントも

東日本大震災をきっかけに

ローカル由来のウェブメディアを支える人・ヒト・ひと

② 西東京をカバーする「ひばりタイムス」

自然体で地域のテーマを追う

事実を伝えることの難しさ。地域のリアリティを踏まえて模索

メディアOBがローカルメディアを立ち上げるとき

③ メディアの現場を拡張する「TOHOKU360」

参加と連携が最大のエネルギー

試行錯誤が続く参加の仕組みづくり

地域メディアの目標は「地域連携」

 

第6章 地域映像祭の動向  ―その課題と展望

はじめに

① 市民映像のハブとしての東京ビデオフェスティバル

TVF2021に応募された映像

TVFの42年と市民映像作家たち

市民映像が向き合った地域の課題

① TVFの初期の動向と市民映像作家たちの課題

②過疎化と高齢化に向かい合った映像作品

③ 地域で発生した困難を地域だけの問題にしない

② 今日の地域映像祭での地域づくりにつながる取り組み、そこで生まれる映像作品

地域の魅力と場所の力

地域と映像制作の新しい関係

市民映像のハブとしての映像祭

 

第7章 自治体広報の新たな展開 

―防災、シティプロモーションに向けて

はじめに

① 大規模災害時の被災地での自治体広報

東日本大震災での対応

熊本地震での対応

② シティプロモーションに向けた自治体広報

首都圏、関西圏でのフリーペーパーの発行

県域民放局に代わる地域映像配信を目指して

 

第8章 市民メディアの現場は今 

―SNS全盛期における市民メディアの活動の担い手の現状

はじめに

① かつての市民映像の作り手は今

各地の市民映像祭

地域の映像の作り手がつながるビデオサークル

若い世代の市民映像制作者を育てるために

② ミニコミの現状

人と地域をつなぐミニコミ

地域のモノを届けるミニコミ

③ 市民ラジオの取り組み

④ 広がる市民のトーク空間

地域で開催される多様な市民講座

市民が対話する哲学カフェ

⑤ インターネット放送によるトークライブ配信

商店街のインターネット放送局

コミュニティFM局に代わるインターネット放送局として

 

 終 章  防災と関係人口拡大に向けたローカルメディアの課題のまとめ

はじめに

新聞・放送系ローカルメディアの動向と課題

市民、自治体によるローカルメディアでの発信の動向と課題

あとがきにかえて―ローカルメディアの将来の方向について

執筆者紹介 

こんな人に読んでもらいたくて「仙台ジャズノート」を書きました。

この作品にはジャズ音楽を演奏する喜びを知っている人が大勢登場します。プロもアマチュアも、小学生から60、70代のシニア世代まで。コロナウイルスのために少しイライラが募るけれど、オトを楽しみ、つなぐ喜びに触れてみませんか?                                

 この本を読んでもらいたいのは、たとえば・・。  

  • ジャズ音楽が好きな人
  • 古くても新しくても・・。とにかくジャズを聴くのが楽しい人
  • ジャンルにとらわれず、音楽が好きな人
  • アマチュアで演奏する人
  • 楽器を演奏する人、楽器を始めた人
  • 楽器やバンドを始めたい人
  • 楽器を演奏した経験がある人
  • ジャズ音楽最大の謎であり、魅力でもある「スイング」に取りつかれた人
  • 歌を歌うのが好きな人
  • 新型コロナウイルスに負けずに音楽を続けたいと思っている人
  • 吹奏楽に興味を持って頑張ったことのある人
  • 音楽教室で習っている人あるいは習ったことのある人
  • 子どもたちの音楽活動に関心がある人
  • 定年後、何か一つ挑戦してやろうと思っている人
  • 子どもや孫が音楽に夢中だ、と楽しみにしている人
  • 子どもや孫の世代にの音楽を聴く楽しみを伝えたいと思っている人
  • 息長く趣味を続ける楽しさを知っている人
  • 「仙台」という街が好きな人
  • 音楽活動が盛んな街に住んでいる人
  • 自分の街が好きな人

香月登さんの『「シニア」「ローカル」のメディアにデジタル出版をオススメする理由』

【仙台ジャズノートミニ報告03】「金風舎」を運営する「デジカル」の代表取締役社長の香月登さんのnoteです。『「シニア」「ローカル」のメディアにデジタル出版をオススメする理由』。拙著について触れていただきました。

「シニア」×「ローカル」×メディアDX=デジタル出版の大テーマ。大いに共感するところあり、なので少しずつ咀嚼しながら考えていくつもりです。

https://note.com/nobosan/n/n8ae752a9eb72?fbclid=IwAR0WtQEq6GnsBCy4GTv2pDtvsLXZCknJTxMQKApc9RmBxnZLi7ATB2K5owY

書評をいただきました。「仙台ジャズノート」

Toshihide Doiさんより拙著「仙台ジャズノート」に書評をいただきました。いろんな成り行きでジャズ音楽に絞ったけれど、取材中、「どうしてジャズだけ」という、視線を感じていました。Doiさんの書評は、そんな気分をしっかり指摘してくれています。以下、書評全文を引用しましす。
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この欄を借りて友人が出した本を紹介させて……あれれ、すでにふたりに追い越されてしまっている。のろまですみません。でも、めげない。紹介文は書き上げてしまっていたのです。ほら「二度あることは三度ある」って言うし。
 この本の特徴は、仙台という一地方都市をステージにした「ローカルなジャズ」の情景を描いていることです。ローカルと言ったからって、卑下しているわけではありません。等身大なだけです。筆者自身が演奏者の端くれとしてかかわっている、世界の住人ひとりひとりを訪ねては、「ジャズとは何か」を問い続けます。プロ、アマチュアの隔たりもなく、世代も小学生から「長老」まで、楽しく息づいている姿を肩ひじを張らずに伝えてくれます。
 読み進めるうちに、気づくことがあります。仙台市内の場所、場所に楽器を手にしている笑顔が配置されています。あぁそうなのか。筆者はジャズの視点から仙台という街の地図を描いているのかもしれない、と。横に広がるとともに、街が生きてきた縦軸が、しっかりとした「背骨」になっています。この街が好きなんだな。
 となれば、どの地方都市でも「息づく地図」を作れるのではないか。ジャズでなくても、音楽でなくてもいいのです。絵画であれ、踊りであれ、さまざまなアートを視点に、装いにあふれた、誰もが生きている街の地図です。その「先例」として読むこともできるので、ぜひ手に取ってほしいです。
 「仙台ジャズノート」(金風舎)は、オンデマンド出版という形をとっています。書店には並びません。アマゾンに注文すると、送られてくるというシステムです。

「仙台ジャズノート」を書いた理由など

ジャズ聴き45年、学生&社会人バンド歴48年の元記者・編集者が書いたジャズレポート。とは言っても、主要なジャズメディアの「好物」である世界に名だたるミュージシャンが登場するわけではありません。身近なライブ会場やストリートで見聴きした「身近な演奏者たち」へのアクセスの記録です。

登場するのは小学生から80代のシニア世代まで。たとえば小学校低学年が自分の体よりも大きい(?)管楽器にぶら下がるようにして演奏しています。ボランティアミュージシャンの指導を受けながら巨匠カウント・ベイシーのスタンダードを承継しています。水準ひとつ飛びぬけているプロの周囲には、アマチュアとプロの区別なく演奏者が集まります。レッスンシステムがさまざま整備されてきたおかげで、アマチュアの中には技術的にはプロをもしのぐ演奏者も珍しくありません。アマチュアたちにとっては市民活動的な練習の繰り返しが命。市民センターや音楽スタジオに定期的に集まっては音楽を楽しんでいます。

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本書はそうしたローカルの現場を支えるミュージシャンたちへの取材の記録です。特にインタビューを隅々までお見せすることに最大の注意を払いました。ニューヨークに行かなくても、ニューオーリンズには行けなくとも、身近な現場で繰り広げられるジャズシーンを堪能してください。

長年、仙台、東北を主な取材エリアとしてきた筆者が、定年後、念願かなって身近なジャズシーンへの取材を敢行しました。「地域」「地方」「地元」にあるニュースをネットを通じて世界に発信したい!そんな共感でつながった仙台発のネットメディア「TOHOKU360」で連載を始めたとたんにあの「新型コロナウイルス」が・・。全世界のエンタメ現場同様、身近なジャズシーンも動きがほとんど停止状態に追い込まれました。

その窮状から抜け出すために多くのミュージシャンがひそかに自己練を重ねました。彼ら彼女たちが中心になり「三密」対策を十分に講じた演奏の場を自ら主催し、リモートによるネットライブを重ねた事実をしっかりとらえることができました。身近なミュージシャンたちの音楽にかける前向きな姿勢は、本書のための取材を終えた時点よりもさらに増勢の一途。そのスピードと質の高さを自分なりに楽しむことができているのは、取材者冥利に尽きると言っていいのだと思います。
ジャズに限らず全国各地には、それぞれに身近な現場が必ずあるはずです。ブログなどでリポートを書いてみませんか?仙台とネット上で連携しましょう。

▶目次

プロローグ

第1章 身近なジャズ

第2章 現場を見る

第3章 回想の中の「キャバレー」

第4章 コロナとジャズ

第5章 次世代への視線

エピローグ

あとがき

 

シニアネット仙台オールディーズOldays 活動記録の利活用のために

どこかに積んだままになりがちな古い資料やデータを散逸しないようにするにはどうすればいいでしょうか。仙台で活動しているNPO法人「シニアのための市民ネットワーク仙台(通称シニアネット仙台)」のアーカイブサイト「シニアネット仙台オールディーズOldays」を始めました。なんだかあか抜けないなあ、と自分でも思いますが、お金をかけない、運営負担をなるべく少なくする-の方針のもとにボランティアで続けるには妥協も必要なんです。
 シニアネット仙台とのかかわりは、1995年8月12日の立ち上げに参加したことから始まりました。NPOが日本に登場する以前のことで、市民活動とかボランティア活動とか称していました。ネット環境が素朴ななか、手作りでホームページを立ち上げました。仙台の市民活動団体の中で最も早かったことは自分だけが知っています。(笑い)
 このホームページにはほぼ10年分の活動の記録が収容されました。当時のメンバーたちの「血と汗と涙」、喜怒哀楽のすべてが詰まったデータといえばいいでしょう。あまりにも手作り感がすごくて、その後のホームページ更新と連動させることができませんでした。データの散逸だけは防ごうと、自分のハードディスクに一括保存してあったのですが、画像の位置情報や画像自体がどこかにとんでしまい。元の形で表示することは難しくなりました。
 以来、時間だけが過ぎていくので、今回、無料のブログサービス(ライブドア)を使って「オールディーズ」を作ることにしました。自分のハードディスクに保存した大量のデータを一つ一つ確認しながら掘り起こし、適宜、説明を加えながらブログ記事として仕立てます。画像もあるので思うようには進みませんが、これもボランティアならでは。数日おきにブログが更新されると思っていただければありがたいです。
 もともと40代半ばに仕事でシニアネット仙台の立ち上げにかかわりました。会社からは「いくらキャンペーン(だったのです!)の成果とは言え、人や金をいつまでも出せない」と言い渡されたのをきっかけにNPOの世界にはまっていきました。
 多くの「同志」たちと出会い、仕事以外の人間関係に導いてもらいました。会社を卒業して早くも丸7年が過ぎました。大きな組織を卒業しても、慌てることなくやってこれたのは、シニアネット仙台時代に培った自立心(?)のたまものではないかと思って、のんびりと進むことにします。

「仙台のオト」を主題に組曲 作編曲家秩父英里さんと仙台のミュージシャンが共演

仙台の「街の音」を採録し、さまざまな音にちなんだ曲を組曲形式で演奏するジャズライブを聴きました。仙台ジャズギルド主催の「Sound Map ← 2020→ Sendai」。米ボストンにあるバークリー音楽大学を首席で卒業した作編曲家でピアニストの秩父英里さん=仙台出身=が仙台の中堅の演奏者らと共演しました。

「Sound Map ← 2020→ Sendai」に出演した演奏者たちは事前に採録した「街の音」を主題に、4パートから成る組曲を演奏しました。伝統的なジャズのニュアンスだけでなく、現代音楽のような展開、カリプソ的な南国調など、とても楽しめる内容でした。特に賛助出演した仙台フィルのチェロ奏者山本純さんのサウンドは、ジャズライブの楽しさを新たに提供してくれるようでした。

組曲の芯となった「街の音」は、市バスの車内の音、清流として知られる広瀬川の流れをとらえた音、仙台空港の発着音など。「街の音」によって演奏者の何がどう刺激されたのかは、推測することさえ難しいのですが、秩父さんの指示・指揮のもとに繰り広げられるサウンドを聴いているうちに、新しい形の「街の音」が生まれつつあるように思えてくるのでした。

 同時に、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるなかで「街の音」を取り上げたことの意味が次第に明瞭になってくるようでした。わたしたちの暮らしがひたすら自粛、活動停止に向かえば、あれほど多様で豊かだった「街の音」が消えてしまう可能性さえあります。そこには、演奏家たちが今こそ、演奏し表現し続けることの意味も二重写しになっていました。

おひとりさまメディア、っていいもんだよ。

仙台のさまざまなメディアの関係者が事例発表する「仙台メディアフェスティバル」が2019年11月23日、仙台市青葉区一番町のフォーラス8階「TAGE」で開かれました。市民参加型のニュースメディア「TOHOKU360」と「TAGE」の共催で、100人を超える来場者で一日中、にぎわいました。仙台メディアフェスティバルは今回が2回目。

TOHOKU360の編集デスク兼通信員(市民ライター)としてTOHOKU360に参加しているので、正確には主催者側あるいはその応援団的な立場ではありますが、個人的なメディア活動である「メディアプロジェクト仙台」(振り返れば新聞社卒業後6年になります)として企画展示に参加しました。

仙台メディアフェスティバルのために設定したテーマは「おひとりさまメディアが面白い」です。展示内容をPDF版にしました。お時間とご関心のある方はご覧ください。「おひとりさま」の言葉を見た人には「寂しそうだ」との印象を与えたかもしれませんが、現職時代を振り返れば、たとえメディア企業に身を置いていても結局は自分一人。組織集団を頼みにするばかりで、まともに課題解決さえできないのではどうしようもありません。

それに対して仙台メディアフェスティバルに参加した多様なメディアの人たちは、大きな既存メディアに比べれば、一人一人の感性や知識、実践力が問われる中で勝負しています。経済的にも恵まれているとは言えないのですが、その着想と、自分たちが設定した目標に向かって進むエネルギーは半端ではありません。

「おひとりさま」の表現はそうした若い世代にエールを送るつもりで考えたものです。もちろん、新聞とネットの双方に軸足を置きながら取材し、編集し、発信し、蓄積・再利用する、大きなプロセスに関して、その都度、自分の周りに起きた、技術、コンテンツ両面にわたる事柄も不十分ながら整理してあります。何よりも、個人的に重要だと思うのは「おひとりさま」で意識的に「メディア」にかかわることによって、仕事やメーンとなる役割以外に「自分軸」が複数できる点です。それらの軸の専門性を時間をかけて高めることによっていわゆる本業へと展開することもありえるし、年齢をいくら重ねても途絶えることのない自分軸に育っている可能性だってあるわけです。

現に仕事を持っているか、これから仕事に就く若い人におすすめなのは、「本来業務」が落ち着いたら、「おひとりさま」で関わるに足るテーマを探すことです。最低限、自分のブログを書き続け、個人メディアとして発信続けるのが望ましい。複数のテーマをキャッチし、時間をかけて育んでいくことで、自分をメディア化するセンスは磨かれます。少なくとも会社人間、組織人間として自らを消耗し尽くすなんてことはありえません。

もちろん、「本来事業」との関係で苦しいこともきっとあるはずなので、そんなときは無理はしない方がいい。どこまでも柔軟に自分本位に続けましょう。

インターネットの登場以来、情報を集め、編集し、蓄積・利活用するツールやシステムは面白いほどに変わってきました。自分にぴったりのツールはかならず見つかります。自分だけの情報環境を組み立てる力を持つことは、たとえばメディアの世界で仕事を見つけるときに有効だし、メディア以外の仕事に就くうえでの基礎的な体力として重要なのは言うまでもありません。

今回の展示では「ブログ」を重要なポイントとしてあげておきました。ブログという表現形式が登場して爆発的に利用される時間を経て、一時は「ブログ疲れ」という言葉さえ聞かれました。どんどん下火になるような雰囲気さえありました。

ところが、Facebookなどのソーシャルメディアが登場してからは、個人的に運営するブログが大きく変質しました。ソーシャルメディアの拡散力は、なるほど注目に値しますが、時間と手間をかけるほどに、そのコミュニティが「仲良しクラブ」的な雰囲気に変化していくことが珍しくありません。

そんなときに、長い時間をかけた自分のブログ環境が一つあれば、コミュニティに参加するにあたって、自分軸に支えられた奥行き、深みを演出する強力な仕掛けになります。ソーシャルメディア時代に意識して「おひとりさま」であろうとすると、人とのつながりはむしろ加速します。そんなに悪いものではないのです。

おひとりさまメディアが面白いPDF版

仙台メディフェス・ビオトープ論PDF版

 

ローカルメディアの鼓動が聞こえる/日本新聞博物館

横浜市にあるニュースパーク(日本新聞博物館)で、全国各地の「ローカルメディア」160点を集めた展示会「地域の編集」が行われています。地域に根差した新聞社の事業事例24社30例と組み合わせながら、多様化が進むメディア社会の風景を見せてくれます。新聞社員の研修を兼ねて、ニュースパークと地元「ローカルメディア」の取材を進めてはいかが?
ニュースパークが今回の企画のために収集し、取材した「ローカルメディア」はさまざまな地域特性やテーマに支えられています。これらの「ローカルメディア」を丹念に読んでみると、メディア社会のありようが単なるビジネスや「マネタイズ」だけで動いているわけではないことを実感できます。なぜか新聞は手を出さないけれども、分厚くて豊かな地域コンテンツがあることも分かるでしょう。
 デジタル化やインターネット、特にソーシャルメディアの普及が急速に進む中にあって進むべき方向性を見失っている新聞社が仮にあるなら、ニュースパークが収集した「ローカルメディア」の成り立ちや運営の実情に関心を持ち、許されるなら編集に参加してみることをおすすめします。その際、上から目線、先人・先輩面は禁止です。
運がよければ、「元祖ローカルメディア」(この企画を支えた編集者の言葉です)と一緒に歩いてくれる人たちの姿や手掛かりが見えてくるかもしれません。