Permalink

off

持続するジャーナリズム/ハワイのデジタルメディア(4)

beat_henshuCivil Beatはハワイのデジタル&インターネット専門メディアです。コンテンツに値段をつけて提供する課金モデルです。地域密着型で、調査報道と権力監視を旨とする「ウォッチドッグ」を理念としています。

地域の細かい情報に着目しながらメディア事業のありようを追求するスタイルを「ハイパーローカルメディア」と呼びます。ジャーナリズムの観点からローカルに着目する取り組みも米国を中心に多様に存在します。Civil Beatもそうした事例の一つですが、デジタル環境に正対しながらジャーナリズムの理念を「ローカル」に求めようとする点で、かなり骨太な印象が強いメディアです。

Civil Beatをフルに利用するには月9ドル99セント払う必要があります。4年前にスタートした当初は、月額19ドル99セントだったのですが、最近になってほぼ半額に引き下げられました。その理由について、Civil Beatに注目する専門家の間からは、経営の厳しさを指摘する憶測まじりの声も聞こえてきます。「資金がいつまで持つかがポイントだ」。世界的な投資家が誕生させたメディアである点を特別視するムードがないわけでもありません。

しかし、もともとデジタル系のメディア事業は、紙主体の事業に比べて設定できる価格が一ケタは違います。新聞に比べて金額は圧倒的に少ないとはいえ、先行投資や費用をカバーするだけの売り上げをデジタルで確保するのは、決して容易ではありません。デジタルとメディアの双方に少しでもかかわった人なら耳にたこができるほどの聞き飽きた話です。

米国でも「ハイパーローカル」にビジネスモデルとしての可能性を感じる人は多くはありません。そんな中でCivil Beatは報道価値をあえてローカルに限定し、マーケットを狭くとらえる手法を導入しました。今回の取材を申し入れるため事前に送った質問の中でも、ローカルに特化したデジタルメディア事業の見通しを問う項目を入れておきました。

編集の責任者の一人であるエリック・ペイプさんの答えは、次のような逆質問を伴うものでした。

「その質問は、利益を上げるビジネスモデルとしての可能性をたずねているのですか?それとも今後、持続可能なジャーナリズムのあり方について聞いているのですか?日本では一体、どちらなんだろうと関心があります」

写真はCivil Beatの編集ルーム。驚くほど静かな仕事場でした。

Comments are closed.