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「市民の鼓動」という名の地域密着/ハワイのデジタルメディア(1)

civilbeat_building.jpg 「憧れのハワイ」を再訪しました。念願だった地域特化型のデジタルメディア「シビルビート(Civil Beat)」への取材が可能になったのです。昨年秋以来、あれやこれやと準備してきたプランがやっと実現しました。Civil Beatは、世界的なネットオークションサービスeBayの創設者であるピエール・オミダイア氏が2010年、ホノルルに立ち上げました。ホノルル中心に新しいジャーナリズムを模索している地域特化型の有料デジタルメディアです。

地方新聞社に身を置いて、後半17年をデジタル分野で過ごしてきた経験からすると、Civil Beatのように新聞と離れたところで起案されるチャレンジは、それだけでまぶしく、取材の手が届かなかった事例でもあります。デジタル専業でローカルに焦点を当てた報道メディアであること、有料かつデジタル専業であることがポイントです。

取材を計画するにあたって、自分が仕事の現場としてきた仙台を、ハワイにあてはめてみました。調べてみると、案外、似た環境でもあるようです。数字は2010年現在で、いずれも概数です。

人口は仙台が104万人、ホノルル市(37万人)を中心とするホノルル郡が95万人です。世帯数は仙台49万世帯、ホノルル郡29万世帯。65歳以上の人口比率(高齢化率)は仙台13.2%、ホノルル郡13.4%。面積は仙台786平方km、ホノルル郡1553平方km(陸地部分)。

インターネット普及状況の点で、比較可能な統計数字は見つけられませんでしたが、一般的には、ハワイの場合、①インターネット回線はケーブルでテレビと一緒に普及している②高速回線や無線LANの普及の点では日本よりも遅れている-と言われています。

人口規模は即ち、マーケットの広さです。仙台と同程度の規模の地域で「ローカル」をターゲットに、デジタル専業の報道メディアを立ち上げるとしたらどんなイメージになるのでしょう。主体が既存メディアか、独立系かは別にして、仙台圏で同様のチャレンジをするための条件を模索しています。仙台圏で考えうる条件はそのまま全国各地の地域メディアのありようともかかわってきます。

米国のモデルをつまみ食いすることで、何かが始まるとは初めから考えていませんが、4年経過したCivil Beatの現場から見えてくるものがあるはずです。あまりにも有名な投資家が立ち上げた事例であるため、特別視する見方もあるようです。地元の既存メディアの間には警戒するムードもあったようだし、新興メディアならではの困難な問題もつきものです。そのせいもあって聞ける範囲と聞けない範囲のはっきりした取材となりました。想像力をできるだけ膨らませて、わがことのシナリオを考えてみたいと思います。

写真は「シビルビート」のあるビル。ホノルルのダウンタウンから車で20分ほどの住宅街にあり、外部からはその存在が分からない。

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