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新しい価値としての「ニュース」/自分で解題「仙台発ローカルメディア最前線(1)」

電子書籍とPOD出版を組み合わせた拙著のタイトルに「ローカルメディア最前線」を入れている理由は二つあります。

第1に、文字通り仙台を中心とした地域メディアの新しい動きに注目しています。既存メディアの動向には一切、触れていません。無視しているわけではないのですが、従来までのメディアの常識や前提ではとらえきれないような動きが確実に生まれている。だから、そのあたりをしっかり「見える化」しておく必要があります。地域を舞台とする新しい動きを仔細に追いかけると、既存メディア、特に筆者が得意とする地方新聞業界の常識とはだいぶかけ離れたところに存在していることが次第に分かってきます。

それらの事例は、既存の主流メディアにかかわっている一部の人たちの目にも触れているはずです。既存メディアの伝統や事業規模からすれば、「仙台発ローカルメディア」に登場する事例は、まるで微弱電流のようだと感じるかもしれません。そうした事例が存在する意味さえとらえきれていない可能性もあります。

しかし、そうした地域における実践の担い手たちに会い、話をすればするほどに、自分を育ててくれた既存メディアの問題点と、解決法がおぼろげながらにつかめるような気がします。拙著では、その解決法について、とりまとめることは、あえてしていません。素材としてしか提供していないので、ご関心のある人はぜひ目を通し、自分の頭で考えてみてください。歴史も背景も異なる地方新聞社を取り巻く事情を正確に踏まえなければ、本当の意味での解決法にはなりません。その意味で、既存メディアの「中の人」たちにとって、解決のための方法を外部の誰かに示してもらうことはもはや禁じ手に近いはずです。

第2に、長い間、ほとんど無意識に使ってきた「ニュース」という言葉が、インターネットやデジタル技術の発達に伴い、新しい意味や実践の現場を獲得しつつある点に着目しています。

「ニュース」といえば、これまでは特定の報道機関が多数の受け手に向けて届けるものでした。発信者と受け手が、いわば「1対多」の関係に立つマスコミュニケーションの形態でした。発信者はおおむねプロフェッショナルな職業者として登場しました。

しかし、インターネット、特にソーシャルメディアが社会の隅々に浸透するにつれて、ニュースの現場は、これまで考えてこなかった可能性と魅力に富むものになりつつあります。その可能性と魅力を無視するかぎり、ニュースの世界は、旧態依然の手あかにまみれたものであり続けます。これからのニュース世界は「インターネット社会」「デジタル社会」とともに拡大し、新たな価値を求めて、多様な当事者が活発、かつ柔軟に活動するステージとなりえるはずだ、というのが、拙著を支える理念のようなものです。

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