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戦略ポイントは解説と地域/「ザ・ページ」の意味を考える(1)

page_topニュースサイト「ザ・ページ(THE PAGE)」をご存知でしょうか?ヤフー株式会社の完全子会社「ワードリーフ」社が運営しています。「ヤフーニュース」の編集長だった奥村倫弘(おくむら・みちひろ)さんが代表取締役を務めています。

同社が2013年3月29日に発足してから2年7カ月。「解説」と「地域」を重視するユニークな路線を歩んでいます。日本にインターネットが登場してほぼ20年。本来、魅力に満ちた可能性のはずのコピペが逸脱・悪習化したり、個人や組織の好悪判断を先行させるあまり、異なる意見を受け入れない傾向も目立ちます。

そんな中で、「ザ・ページ」は、オンラインメディアとしてジャーナリズムの再定義を試みようとしているように見えます。「ザ・ページ」のコンセプトや試行錯誤を通じて、従来型のマスメディアが積み残してしまった課題が見えてくるようでもあります。ザ・ページの現状を中心に、これからのジャーナリズムのあり方について奥村さんに話をうかがいました。(5回続き)

● ネットの透き間を埋める。
-ザ・ページの現状について教えてください。
奥村:正直に言えば、手探り状態が続いています。最初に決めて、うまくいっている部分と、そうはなっていない部分があります。たとえば、初めは、スマートフォン時代だから長文は読まないぞ、と言っていました。800文字から1000文字に記事をまとめようとしましたが、「読みごたえがない」とか「子どもの作文か」といった、批判、お叱りを受けることがあって、今では1000文字を超えることが珍しくありません。うまくいかない部分はどんどん変えています。そういう意味で、これを必ず達成しようというものはありません。
ただ、なぜこの会社を作ったのか、という話をすれば、インターネットに存在しない情報がたぶん、たくさんあるということなんです。多くの場合は、新聞社さんがそうした情報を持っているんだけれども、表に出てきません。特に情報を有料で提供しようという傾向が進むにあたって、インターネットに出る情報と、インターネットには出ない情報がはっきり分かれてきています。

ビジネス上の戦略なので、それは仕方がありません。ただ、公共性の高い情報なのに、インターネットに出ないのは好ましくありません。「ザ・ページ」の役割は、そういうところの穴埋めすることです。つまりは、大事だし、必要だけれども、インターネットに表れないニュースを発掘し、穴埋めするのが仕事だと考えています。

●解説記事を重視し、ユーザーの疑問にこたえる
奥村:ザ・ページのキャッチフレーズ「気になるニュースを分かりやすく」は、解説ものを重視するという意味です。ニュースと言えば、生もの、ストレートニュースであることがインターネットでは多い。解説記事が占める比率は非常に小さい。だから「解説サイト」とうたっているんです。

実際、「マイナンバー受け取りを拒否したらどうなるか」とか、ノーベル賞の話で言うと、ニュートリノに質量があったというのはどういうことか-をなるべく優しく、かみ砕いてお伝えしました。「ザ・ページ」が掲げる解説重視の趣旨が、すべて達成できているとは言いませんが、生活のノウハウではなく、「時事問題」に関して一般の読者が持っていると思われる疑問に答えていきたい。

● 東京、大阪、愛知に地方版
奥村:「解説サイト」的な取り組みと合わせて、東京、大阪、愛知の3カ所で地方版をやっています。仙台(宮城)でもそのうち取り組みたいと考えています。
なぜ最初に大阪で始めたかと言えば、大阪にはいわゆる県紙がありません。そこに住んでいるローカルの人たちの声を集めたり、発信したりする場所が、少なくともインターネットメディアには存在しないと理解しています。その部分を、われわれが作っていきたいと考えました。

インターネットでニュースを提供するのも、結局はネットワークが重要です。ネットワークをどれだけ広く持っているかが大事です。46の道府県全部にというわけにはいかないのですが、できるだけ多くの地域で、ライターさんに活躍してもらいたいと考えています。

地域はさまざまな状態にあります。新聞であれば、県紙のない地域があります。県紙の強いところ、強くないところと、その実態はさまざまです。わたしの読売新聞時代の初任地の福井や徳島のような地域は地方紙が強い。そのほかの地域では概して全国紙が強い。

ことさらに強調するつもりはないのですが、新聞の場合、ブロック紙ぐらいになると、インターネットのニュースでも、全国ネタ中心に扱っていくようになります。全国紙とほとんど変わらない印象を持つニュースサイトがあります。

そうした事例とは対照的に、ブロック紙の中でも、地域に密着したサイトを作っている事例はあります。インターネットにおいても、紙面においても。

われわれは、地域の人たち-たとえば地方新聞社と共に仕事をする感覚で、地域のニュースを拾っていきたいと思っています。それがネットに地域版を作る理由であり、地域版をハブとして実現できるネットワークに期待しています。

それは何かと言えば、「地方発の全国ニュース」です。最も小さなコミュニティーにニュースや情報を投下する役割は、フェイスブックやツイッターの中で、日々、形成されると思います。「面白そうな展示会が行われます。来てくださいね」といった話は、同じインターネットではあるけれども、ヤフーのトピックスのようなところに載せる情報として適しているわけではありません。それよりは、恐らく自分が所属しているコミュニティーに投下する情報として機能する方がいいはずです。

(次回に続きます)

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