Permalink

off

市民の参加が解決の道を開く/地域メディア公開編集会議から(その2・完)

kaigi01「市民がかかわるメディア」「地域に根差したメディア」をどう呼べばいいかは、そのメディアの特色とセットになる話なので、慎重に考える必要があります。

地域に深く根差したメディアという場合、たとえば新聞界には「全国紙」「地方紙」の線引きのほかに、より狭い地域に限定されたメディアのイメージで「地域紙」のようなとらえ方が既にあります。

では「公開編集会議」に参加した地域メディアと「地域紙」にどんな違いがあるのでしょう。「地方紙」との間にはどんな線引きが可能になるでしょうか。

「報道」「ジャーナリズム」の要素をどれだけ含むかがかぎだと考える向きもあるかと思いますが、「地域メディア」の編集にかかわる人たちが、地域の諸課題を意識するだけでジャーナリズムの実質を伴います。メディア活動の中心を担う人たちが、問題の所在に近い「市民」である分だけ、敏感なアンテナと関心を備えるメディアとしての可能性も高いはずです。

試みに、非営利分野でいろいろな社会問題に取り組んでいるNPOに目を向けてみます。さまざまな分野で急速に増加したNPO群は「市民参加」を基本的な前提にするとともに、それぞれのテーマに関する実践的な経験や問題の解決に向けた見解を多様な形で蓄積しています。そのNPOが、従来からの紙媒体にとどまらず、インターネットの活用も含めて情報発信を本格化させるとしたら、専門性と市民参加の要素を備えたメディアとしての資格を有するようになるとは言えないでしょうか。伝統的な既存メディアが「中立」「公平」などの観点から取材対象との距離を保とうとするあまり、問題の所在から遠ざかっているとすれば、「市民メディア」「地域メディア」としてのNPO群という設定には現実味があるように思います。

情報の編集や発信の分野は、かつてはマスメディアがほとんど独占していました。市民は巨大な情報流通の過程にあって、もっぱら受け手にすぎなかったわけですが、インターネットが登場し、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)が爆発的に普及して以来、市民の手による編集、発信のハードルがどんどん下がりつつあります。

「公開編集会議」の席上、「紙媒体だからこそ地域をつなぐことができる」という意見が聞かれました。震災後、地域内の被災者や地域から移転せざるを得なかった人たちと直に向き合ってきた人たちならではの重みを感じました。

この際、指摘しておかなければならないのは、1日に1回か2回、大量に新聞を届けることを業とするマスメディアの現場のニュアンスとはかなり異なっていたことです。地域メディアを発行し続ける人たちと受け手との間に成り立つ感触が、メディアの成り立ちに反映しているとでもいえばいいでしょうか。編集にかかわるスタッフ自身が受け手と同じ環境に暮らしていることの表れなのかもしれません。

地域メディアの公開編集会議を通じて相対的に感じたのは、地域メディアの多様性と可能性、課題の大きさでした。地域メディアが抱える課題は、その実、メディアとしての特色、社会的な位置づけと表裏一体になっています。たとえばメディアを運営するための資金の確保や取材や編集にかかわる人材難は、どの地域メディアにも共通する問題ですが、多くの市民の参加が多様なアイデアを生み、課題を乗り越える道を発見することにつながります。「公開編集会議」に参加した地域メディアの報告にも、既存のマスメディアとは異なる「市民が参加するメディア」の可能性を強く感じました。

地域メディアのありようを具体的に模索しながら懸案を解決し、地域つながり、テーマつながりによるメディアネットワークを構想できるとしたら、マスメディア(数年後、どうなっているかは誰も分からない)との合わせ技による、新たなメディア社会をイメージできるかもしれません。

*写真は「地域メディア公開編集会議」のちらし。

 

 

Comments are closed.