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多メディア記者ネイディーン・カムさんの場合/ハワイのデジタルメディア(7)

nadinekam

「スター・アドバタイザー」傘下のポータルサイト「ホノルル・パルス」は、世界的な観光地ならではの柔らか系のコンテンツであふれています。コンテンツは、写真ギャラリー、ブログ、音楽、料理と酒、映画とテレビ、「金曜日だ!」(週末情報)、舞台に分かれています。1日100万ページビューを稼ぐ人気サイトです。キャッチフレーズは「ハワイの娯楽とナイトライフ」。

特に読みごたえがあるのは多彩なブログです。「スター・アドバタイザー」の専門記者や特約ブロガーが筆者として名前を連ね、ソーシャルメディアを活用しながら読者との接点を作っています。

ブログは27あります。「スター・アドバタイザー」の記者8人が自分の専門分野について書いています。ブログを書いている記者のうち4人はひとりで2つのブログを書いています。

地元では有名なグルメ・ファッションの専門記者ネイディーン・カムさんに話を聞くことができました。ネイディーンさんはスター・アドバタイザーの「スタイルエディター」の肩書を持ちます。新聞とソーシャルメディアを組み合わせて、幅の広い報道活動を繰り広げています。専門記者としての評価記事に定評があり、地元では影響力のある記者の一人と言われています。

カムさんが使っているネット系のサービスは、ブログ、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムです。「新聞社では今でもネットが不得意な人が多いです。ツイッターさえ使えない人がたくさんいます。ソーシャルメディアは、楽しみながら使えば、そんなに難しくないのに」

話を聞く限りでは、そんなに凝った使い方をしているわけではないようでした。取材に関するこぼれ話や、書く予定の記事についてフェイスブックでさわりを紹介します。写真はインスタグラムにどんどん入れていき、フェイスブックと連動させます。カムさんのフェイスブックを見ている人は、彼女が取材したテーマや記事がいつごろ掲載されるかといった情報にも触れることができます。

インターネット草創期、新聞社と読者(市民)の間の「双方向性」がずいぶん取りざたされたものですが、結局は、そのときのツールや環境を使う記者自身の「双方向性」を鍛えなければ何も始まりません。カムさんのフェイスブックページやウェブの記事を読んでいると、記者歴20年のカムさんが、ごく自然にソーシャルメディアと付き合っていることがよく分かります。

何よりも重要なのは、カムさんの専門領域や記者としての感性、人柄に親近感を抱く人たちとのコミュニティーが自然に出来上がっている点です。ツイッターも「料理」と「美容」ではファン層が違うので、アカウントを分けているそうです。結果として、カムさんのメーンメディアでもある新聞への新たなファン層を開拓することにつながっていないとは誰もいえないでしょう。

「地元で仕事をしていても、誰でも知っているわけではありません。取材の必要があって誰かに連絡したい場合、フェイスブックを使うと簡単なことが多いです。情報源としての使い方になります」

カムさんが実践している多メディア記者ぶりは、ウェブサイトを自分で作れて、動画も取材・編集できる人-のイメージとは少し異なります。本来、ジャーナリストが保有すべき関係をより強力に、より現実に即して、効果的で親密なものにするのが多メディア記者だと思う方が、地域を基盤とする新聞社が目指すべき方向としてはベターなような気がします。

インタビューに楽しそうに応じてくれたカムさんから最後に質問が出ました。「日本の新聞記者はインターネットを使いたいと思っていますか?」

親しい記者の仕事ぶりを紹介するとともに、自分のネット活用について長々と話すと「(「Web日誌2.0」には)写真がないですね。今、利用者を引き付けるには写真、動画が不可欠です。特に動画を活用すると、アクセスがグンと伸びます」とアドバイスしてくれました。

写真はレストラン新装開店のイベント取材の後、インタビューに応じてくれたネイディーン・カムさん。

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